リファラル採用のルール設計とは?定めるべきルールと法律上の注意点を解説

「社員の紹介なら、人柄も分かるし安心だ」 「採用コストも抑えられるし、一石二鳥だ」
このように考え、社員紹介制度、いわゆる「リファラル採用」を導入する企業が増えています。特に、採用に多くのリソースを割くことが難しい企業にとっては、非常に魅力的な採用手法です。
しかし、その手軽さから「明確なルール」を定めずに運用してしまい、思わぬトラブルに発展するケースが後を絶ちません。
- 「友人を紹介したのに、インセンティブが支払われない…」
- 「不採用になった理由を教えてくれず、紹介した友人との関係が気まずくなった…」
- 「Aさんの紹介は採用されるのに、Bさんの紹介は採用されない。基準がわからない…」
こうしたトラブルのほとんどは、事前にしっかりとしたルールを設けておくことで防ぐことができます。 本記事では、リファラル採用を成功に導くためのルール作りについて、法律上の注意点から、規程に盛り込むべき具体的な項目、そして社内に制度を浸透させるコツまで、網羅的に解説します。
もくじ
リファラル採用のメリット・デメリットとは?
まずは、リファラル採用の仕組みやメリット・デメリットを紹介します。
リファラル採用の概要
リファラル採用とは、自社の社員に、友人や知人など、自社に合いそうな人材を紹介・推薦してもらう採用手法のことです。従来の縁故採用(コネ採用)とは異なり、あくまで選考プロセスは通常の応募者と同じ基準で行われるのが一般的です。
リファラル採用のメリット
多くの企業がリファラル採用に注目する背景には、以下のような大きなメリットがあります。
- 採用コストの削減
求人広告費や人材紹介会社への手数料がかからず、採用コストを大幅に削減できます。 - ミスマッチの低減と定着率の向上
社員が自社の文化や働き方を理解した上で紹介するため、候補者とのミスマッチが起こりにくく、入社後の定着率が高い傾向にあります。 - 潜在的な優秀層へのアプローチ
転職市場には出てこないものの、良い機会があれば転職を考えている「転職潜在層」にアプローチできます。
【関連】リファラル採用のメリット7選!デメリットや成功のコツも徹底解説
リファラル採用のデメリット
一方で、運用方法を間違えると以下のようなデメリットも生じます。
- 人間関係のしがらみによるトラブルリスク
紹介者と被紹介者、そして会社との間で、不採用時などに人間関係のトラブルが発生する可能性があります。 - 候補者の同質化
同じようなタイプの社員ばかりが集まり、組織の多様性が損なわれる恐れがあります。 - 制度が形骸化する可能性
ルールが曖昧だったり、社員への周知が不十分だったりすると、誰も制度を利用しなくなり形骸化してしまいます。
これらのデメリットは、まさに「ルール作り」によってカバーできる部分です。
【関連】リファラル採用のデメリット9選!失敗しないための対策を徹底解説
リファラル採用で押さえるべき法律上の注意点
リファラル採用のルールを設計する上で、最も注意しなければならないのが法律、特に「職業安定法」です。知識がないままインセンティブ制度を設計すると、意図せず法律違反となってしまう危険性があります。
職業安定法違反にならないための注意点
職業安定法第40条では、原則として、労働者の募集を行う者がその募集に応じて労働者になろうとする者から報酬を受け取ること、また、募集に際し報酬を与えることを禁止しています。
リファラル採用におけるインセンティブが、この「報酬の供与」とみなされると違法になる可能性があるのです。
ただし、厚生労働省の通達により、一定の条件を満たせば例外的に認められています。
【合法と判断されるためのポイント】
- 賃金・給与として支払うこと
インセンティブを「紹介手数料」ではなく、紹介活動という業務に対する「賃金」や「給与」の一部として支払う形式をとる必要があります。 - 金額が社会通念上、相当な範囲であること
あまりに高額なインセンティブ(例えば100万円など)は、「紹介」そのものへの対価と見なされ、違法と判断されるリスクが高まります。 - 就業規則や賃金規程に根拠があること
リファラル採用制度に関する規程を設け、インセンティブの支払い基準を明記しておくことが重要です。
簡単に言えば、「社員が業務の一環として行った協力に対し、会社が給与として妥当な額を支払う」という形にすることがポイントです。
労働基準法との関連
インセンティブを賃金として支払う以上、労働基準法も関係してきます。具体的には、インセンティブの支払いルールを「就業規則」に明記する必要があります。これにより、支払いの義務や基準が明確になり、社員との無用なトラブルを防ぐことができます。
リファラル採用で定めるべきルール10選
それでは、実際に規程を作成する際に盛り込むべき10個の項目を、規程例とあわせて見ていきましょう。
1.制度の目的
制度の目的を最初に示すことで、社員の理解と共感を促し、単なる「お小遣い稼ぎ」ではなく、会社を良くするための活動であるという意識を醸成します。
【規程例】 第1条(目的) 本規程は、株式会社Take Action(以下、当社)におけるリファラル採用制度の運用について定めるものである。社員の個人的な信頼関係に基づく人材紹介を通じて、当社の経営理念に共感し、事業の成長に貢献する優秀な人材の獲得を目的とする。
【関連】リファラル採用の目的とは?採用コスト削減と定着率向上を実現する5つのゴール設定
2.対象となる紹介者・被紹介者
誰が紹介できて、誰が紹介される対象なのかを明確にすることで、混乱や不公平感を防ぎます。
【規程例】 第2条(対象者)
- 本制度の対象となる紹介者は、当社の正社員とする。ただし、役員、人事担当者、および採用選考に直接関与する者は除く。
- 紹介の対象となる被紹介者は、当社の求人するポジション(正社員、契約社員)に応募する者とする。
3.採用基準
「紹介だから採用される」という誤解を防ぎ、縁故採用との違いを明確にします。選考の公平性を担保するために非常に重要です。
【規程例】 第3条(採用基準) 被紹介者の採用選考は、他の応募者と同様の基準およびプロセスに基づき、公平に行う。紹介者である社員が、自身の紹介した被紹介者の採用選考に関与することは認めない。
4.紹介から採用までのフロー
具体的な手順を明記することで、社員が迷わずに行動できるようになります。
【規程例】 第4条(紹介フロー)
- 紹介者は、被紹介者本人から応募の同意を得た上で、人事部指定の紹介フォームに必要事項を記入し申請する。
- 人事部は、申請内容を確認後、被紹介者に連絡を取り、正式な選考プロセスを開始する。
5.インセンティブ(報酬)の金額
制度の活性化に直結する重要な項目です。金額の相場は一般的に5万円~30万円程度ですが、企業の規模や採用難易度によって設定しましょう。
【規程例】 第5条(インセンティブ) 被紹介者が入社した場合、紹介者に対しインセンティブとして以下の金額を支給する。
・一般職:金100,000円
・専門職(エンジニア等):金200,000円
6.インセンティブの支払条件と時期
早期離職のリスクを考慮し、支払い条件を明確に定めます。金銭トラブルを避けるために最も重要な項目の一つです。
【規程例】 第6条(支払条件) インセンティブは、被紹介者が入社後、6ヶ月間継続して在籍したことを確認した月の給与支払い日に、給与とあわせて支給する。
【関連】リファラル採用のインセンティブとは?相場や制度設計のポイントを徹底解説
7.不採用時の対応
紹介者と被紹介者の人間関係に配慮し、誰がどのように伝えるかを定めます。
【規程例】 第7条(不採用時の対応) 選考の結果、不採用となった場合、人事部から被紹介者本人に直接通知する。選考の具体的な内容や不採用理由は、紹介者を含め第三者に開示しない。
8.禁止事項
企業の評判を損なうような過度な勧誘や、ミスマッチを誘発する虚偽の説明などを防ぎます。
【規程例】 第8条(禁止事項) 紹介者は、本制度の利用にあたり、以下の行為を行ってはならない。 ・当社の許可なく、求人媒体やSNS等で広く募集をかける行為 ・被紹介者に対し、労働条件等について虚偽または誤解を招く情報を提供する行為
9.個人情報の取り扱い
コンプライアンスの観点から、個人情報の保護について明記します。
【規程例】 第9条(個人情報) 紹介者は、被紹介者の個人情報を本人の同意なく取得してはならない。当社は、本制度を通じて取得した個人情報を、採用活動以外の目的で利用しない。
10.制度の改廃
将来的な事業環境の変化に対応できるよう、制度変更の可能性についてあらかじめ記載しておきます。
【規程例】 第10条(制度の改廃) 本制度は、会社の経営状況や採用戦略の変更により、事前の予告なく変更または廃止することがある。
リファラル採用のルールを社内に浸透させるポイント
素晴らしいルールや規程を作成しても、社員に知られていなければ意味がありません。制度を活性化させ、文化として根付かせるためのポイントをご紹介します。
経営層からの積極的な発信
リファラル採用は全社で取り組むべきプロジェクトです。「会社が本気でこの制度に取り組んでいる」というメッセージを、朝礼や全社ミーティングの場で経営層から直接発信してもらいましょう。トップの言葉は、社員の当事者意識を大きく高めます。
分かりやすい説明会の実施
規程をただ共有するだけでなく、説明会を開きましょう。制度の目的やメリット、紹介フロー、インセンティブについて丁寧に説明し、質疑応答の時間を設けることで、社員の疑問や不安をその場で解消できます。
リファラル採用に特化したツールの活用
近年、リファラル採用の運用を効率化・活性化させるための専用ツールやクラウドサービスが増えています。こうしたツールの活用は、成功の確率を大きく高めます。
ツールがあることで、紹介のハードルを物理的に下げることが重要です。理想は、社員がスマートフォンから数タップで知人に情報を共有し、応募まで繋げられるような手軽さです。
気軽に紹介できることで社内へ浸透しやすくなり、人事担当者としても管理工数の削減を実現することが可能です。
【関連】リファラル採用ツールおすすめ5選!メリットや選び方を徹底解説
おすすめのリファラル採用を支援するサービス「リファアルム」

リファアルムは、リファラル採用とアルムナイ採用を同時に支援するサービスです。採用は感覚的に行うものではなく、全従業員を巻き込み、「全社一丸」となって取り組むことが大切です。リファアルムを使うことにより、従業員のリファラル採用やアルムナイ採用に対する「前向きな姿勢」を引き出すことが可能です。
リファアルムを活用する具体的なメリットは下記の3つです。
1、従業員が「リファラル」「アルムナイ」に積極的に協力する、魅力的なカルチャーを形成できる。
2、創業以来のノウハウを活かし、「リファラル」「アルムナイ」だけではない採用活動全体の成功を支援。
3、協力してくれた従業員に対し、業界トップクラスのギフトラインナップで謝礼を提供。
「リファアルム」を活用してリファラル採用を推進しましょう
今回は、リファラル採用の成功に必要なルール作りについて解説しました。
ルールは、社員を縛るためのものではありません。むしろ、社員が安心して友人や知人に自社を推薦できるようにするための「お守り」のようなものです。しっかりとした土台を築くことが、結果的に採用コストの削減やミスマッチの防止といった大きなメリットにつながります。
しかし、「リファラル採用のルール設計について、さらに詳しく知りたい」
「リファラル採用を始めたいが、何から手を付けたら良いか分からない」
といったお悩みをお持ちの採用担当者様も多いのではないでしょうか。
そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ弊社の「リファアルム」にご相談ください。
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