リファラル採用に就業規則は必要? 規定すべき項目と法的注意点を解説

リファラル採用に就業規則は必要? 規定すべき項目と法的注意点を解説

近年、採用市場の競争激化やミスマッチによる早期離職を防ぐ観点から、自社の社員に人材を紹介・推薦してもらう「リファラル採用」に注目が集まっています。

しかし、いざ制度を始めようとすると、 「紹介してくれた社員への報奨金(インセンティブ)はどう決めたらいい?」 「ルールを明確にしたいが、就業規則に明記すべきなのだろうか?」 「法律的に問題がないか不安だ…」 といった疑問や不安を抱える経営者・人事担当者の方も少なくありません。

本記事では、リファラル採用における就業規則の必要性から、具体的な記載項目、そして導入時に必ず押さえておきたい法的注意点まで、分かりやすく解説します。

リファラル採用に就業規則の規定は必須か?

結論:法的な義務はないが、規定が「強く推奨」される

結論、リファラル採用に関するルールを就業規則に必ず記載しなければならない、という法的な義務はありません。

しかし、就業規則本体、または就業規則に紐づく「リファラル採用規程」といった別規程で、ルールを明文化することが強く推奨されています。
なぜなら、ルールが曖昧なまま運用してしまうと、様々なリスクや不都合が生じる可能性があるからです。

1. トラブルの未然防止(「言った・言わない」を防ぐ)

最も多いトラブルが、報奨金(インセンティブ)に関する認識の齟齬です。

  • 「紹介したのに、いつ支払われるのか分からない」
  • 「紹介した友人が試用期間中に辞めてしまったが、報奨金はもらえるのか?」
  • 「Aさんが紹介した時は10万円だったのに、Bさんの時は5万円なのは不公平だ」

支払い条件や金額、時期を明確に規定しておくことで、このような「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、社員が安心して紹介活動を行える基盤が整います。

2. 制度の明確化による社員の理解促

規程として明文化することは、「会社としてリファラル採用に本気で取り組む」という経営メッセージにもなります。 どのような人材を求めているのか、どのような行動(紹介)を会社が評価するのかを社員に具体的に示すことで、制度への理解が深まり、紹介活動の活性化が期待できます。

3. 公平性・透明性の担保

「役員や人事担当者も対象なのか?」「アルバイト社員も紹介して良いのか?」といった対象者の範囲を明確にすることで、制度運用の公平性・透明性を担保できます。 特定の社員にのみ情報が伝わり、紹介が偏ってしまうといった事態を防ぐ効果もあります。

就業規則に規定しない場合のリスクとは?

もし、明確なルールがないまま「紹介してくれたら、いい感じにインセンティブ払うよ」といった口約束ベースで運用してしまうと、以下のようなリスクが考えられます。

  • 報奨金をめぐる労使トラブル
    支払い条件が曖昧なため、社員が期待していた金額や時期と異なった場合、不満が噴出し、最悪の場合、労使トラブルに発展する可能性があります。
  • 社員の不公平感や不信感の増大
    担当者のさじ加減でルールが変わるように見えてしまうと、社員は会社に対して不信感を抱きます。「頑張って紹介しても損するかもしれない」と感じれば、協力は得られません。
  • 制度の形骸化
    ルールが分かりにくく、メリットも不明瞭であれば、社員は「面倒くさい」と感じてしまいます。結果として、誰も紹介活動を行わなくなり、せっかくの制度が形骸化してしまうのです。

これらのリスクを回避するためにも、ルール設計と明文化は不可欠です。

【関連】リファラル採用は違法?職業安定法違反にならないための5つの注意点を解説

リファラル採用に関して就業規則に規定すべき主要項目と記載例(テンプレート)

リファラル採用のルールを定める際、どこまで詳細に決めるべきか迷うかもしれません。ここでは、規程に盛り込むべき主要な項目と、その記載例(テンプレート)をご紹介します。

前提:就業規則本体か「別規程」か?

まず、ルールをどこに記載するかですが、2つの方法があります。

  1. 就業規則本体に、リファラル採用に関する条項をすべて記載する。
  2. 就業規則本体には「リファラル採用に関する詳細は、別途定める『リファラル採用規程』による」といった委任規定のみを設け、詳細は別規程で定める。

おすすめは、2. の「別規程」で定める方法です。 リファラル採用の運用ルールや報奨金額は、採用市場の状況や会社のフェーズに応じて、柔軟に見直したいケースが多いです。 就業規則本体を変更するには、従業員代表の意見聴取や労働基準監督署への届出(※常時10人以上の労働者を使用する場合)が必要となり、手続きが煩雑です。 別規程であれば、就業規則本体の変更よりも機動的に改定作業が行えます(※ただし、労働条件の不利益変更にならないよう注意は必要です)。

【例文あり】リファラル採用における就業規則への主要な記載項目7選

以下に、リファラル採用規程に盛り込むべき主要な7項目と例文を示します。

(例文)リファラル採用規程


第1条(目的)
本規程は、株式会社Take Action(以下「会社」という)が、当社の経営理念や文化に共感し、活躍が期待できる優秀な人材を確保するため、当社従業員による人材の紹介(リファラル採用)に関する手続きおよび報奨金(インセンティブ)の支給について定める。

第2条(対象となる紹介者)
本規程に基づき人材を紹介できる者は、以下の条件をすべて満たす者とする。

  1. 当社と雇用契約を締結している正社員
  2. ただし、以下の者は対象外とする (1) 取締役以上の役員 (2) 人事採用の決定権を有する者(人事部長など) (3) 試用期間中の者

第3条(対象となる被紹介者)
本規程の対象となる被紹介者(候補者)は、以下の条件をすべて満たす者とする。

  1. 会社が募集する求人要件を満たす者
  2. 過去1年以内に当社の採用選考に応募していない者
  3. 現在または過去において当社と雇用関係(アルバイト・業務委託等を含む)にない者
  4. 紹介者の二親等以内の親族でない者

第4条(報奨金)

  1. 会社は、紹介者に対し、被紹介者が次の各号をすべて満たした場合に限り、報奨金として金〇万円(税別)を支給する。 (1) 会社の正規の採用選考プロセスを経て、入社が決定すること (2) 被紹介者が入社日から起算して〇ヶ月間(例:6ヶ月間)継続して在籍し、当該期間の勤務状況が良好であること
  2. 報奨金は、前項の条件を充足したことが確認された日の属する月の翌月の給与支給日に、給与とあわせて支給する。
  3. 報奨金の支給対象期間中(第1項(2)の期間中)に、紹介者または被紹介者のいずれかが退職(解雇を含む)または休職した場合は、報奨金を支給しない。

第5条(紹介の方法)

  1. 紹介者は、被紹介者本人から応募および会社への個人情報提供の同意を必ず得た上で、会社所定の紹介フォーム(または採用管理ツール「リファアルム」)を通じて人事部に申請する。
  2. 会社は、紹介者に対し、被紹介者の選考状況や合否結果について、適切な範囲で情報共有を行う。
  3. 紹介者は、自身の知人であるという理由のみで、選考プロセスにおいて被紹介者が不当に有利または不利になるよう働きかけを行ってはならない。

第6条(禁止事項) 紹介者は、紹介活動にあたり、以下の行為を行ってはならない。

  1. 会社の許可なく、被紹介者に対し金銭や物品を提供し、またはその約束をすること。
  2. 会社の事業内容、労働条件、待遇等について、虚偽または誤解を招く情報を提供すること。
  3. 被紹介者の意思に反し、執拗に応募を勧誘すること。

第7条(守秘義務)
紹介者は、本制度の利用を通じて知り得た被紹介者の個人情報および会社の選考状況について、正当な理由なく第三者に漏洩してはならない。退職後も同様とする。


上記はあくまで一例です。報奨金額を「正社員は〇万円、契約社員は△万円」と分けたり、被紹介者の役職(例:マネージャー以上)に応じて金額を変えたりするなど、自社の状況に合わせてカスタマイズしてください。

リファラル採用の就業規則で遵守すべき注意点

リファラル採用の就業規則を作成する上で、最も注意すべき点が「法律違反にならないか?」という点です。特に「報奨金」の扱いは、職業安定法との関係で慎重な判断が求められます。

職業安定法(第40条)との関係

職業安定法第40条では、原則として、業として(=反復継続して)採用の斡旋を行い、紹介手数料や報酬を得ることを禁止しています(※国が許可した有料職業紹介事業者などを除く)。

では、社員が知人を紹介し、会社から報奨金をもらう行為は、この法律に抵触しないのでしょうか?
重要なのは、社員による紹介が「反復継続的な事業活動(=業)」として行われているか否かです。

社員が、自らの本来業務(例:営業、開発、経理など)の傍ら、臨時的・偶発的に知人を紹介する行為は、通常「業」とはみなされません。 この場合、報奨金は、採用活動への協力に対する「報奨」や「福利厚生」の一環として整理され、職業安定法に抵触しないと解釈されています。

もし、報奨金が「紹介の対価(手数料)」とみなされると、職業安定法違反を問われるリスクが高まります。 規程上も、「紹介手数料」といった表現は避け、「報奨金」「インセンティブ」「紹介協力金」といった名称を使用し、あくまで社員の協力に報いるものであることを明確にしておきましょう。

報奨金の「金額」はいくらが妥当か?

報奨金の金額が、社会通念上あまりに高額すぎると、実質的な「紹介手数料」とみなされ、問題視される可能性があります。

法律で「〇万円まで」という明確な上限額が定められているわけではありませんが、一般的な相場(数万円~数十万円程度)や、他の採用チャネル(例:人材紹介会社に支払う手数料)と比較して、著しく高額にならないよう配慮が必要です。 目安としては、1人あたりの採用コスト(採用単価)を大幅に超えない範囲で設定するのが妥当でしょう。

労働基準法との関係

就業規則や別規程に報奨金の支給条件を明記した場合、それは会社と社員との間の「労働契約の内容」となります。 つまり、会社は規程に定められた条件を満たした社員に対し、報奨金を支払う法的な「義務」を負うことになります。

したがって、後でトラブルにならないよう、前述の例文(第4条)のように「支払い条件」「不支給となるケース」を明確に定めておくことが非常に重要です。

【関連】リファラル採用の注意点7選!法規制から人間関係のトラブルまで徹底解説

リファラル採用を成功させる運用ポイント

就業規則や規程を整備することは、リファラル採用を成功させるための「土台作り」にすぎません。制度を活性化させ、継続的に成果を出すためには、規程整備とあわせた「運用」が鍵を握ります。

制度の「見える化」と社内への継続的な周知

規程を作って社内ポータルに掲載しただけでは、社員には浸透しません。 「今、どの部署でどんな人を募集しているのか」「紹介制度を使えばどんなメリットがあるのか」を、朝礼や全社ミーティング、社内報などで継続的に発信し、制度を「見える化」することが重要です。

紹介プロセス・ルールの簡素化

紹介方法があまりに複雑だと、社員は「面倒くさい」と感じて行動に移してくれません。 「紹介したい人がいたら、まず人事の〇〇さんにチャットで連絡するだけ」といったように、できる限り紹介のハードルを下げる工夫が必要です。

紹介者・被紹介者への丁寧なフィードバック

紹介してくれた社員にとって、最も気になるのは「紹介した友人が今どうなっているか」です。 残念ながら不採用となった場合でも、紹介してくれたことへの感謝を伝え、結果を丁寧にフィードバックすることが、次の紹介活動へのモチベーション維持につながります。

リファラル採用に特化したツールの活用

リファラル採用の運用を本格化させると、人事担当者には大きな負担がかかります。 「誰が誰を紹介したのか」「選考状況はどうなっているか」「あの人の報奨金はいつ支払うんだっけ?」 こうした情報をExcelなどで手動管理するには限界があります。

こうしたリファラル採用の煩雑な運用課題を解決するため、リファラル採用に特化したツールを利用することも効果的です。 制度の周知から紹介の受付、選考状況の管理、報奨金の支払い管理までを一元化し、人事担当者の工数を大幅に削減します。

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本記事では、リファラル採用における就業規則(規程)の重要性について解説しました。

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