採用広報とは? 目的、手法、始め方を5ステップで徹底解説
「求人を出しても、なかなか応募が集まらない」「採用しても、内定辞退や早期離職が続いてしまう」「自社の本当の魅力が、求職者にうまく伝わっていない気がする」
こうした採用に関する悩みをお持ちの経営者・人事担当者の方は多いのではないでしょうか。
その悩みを解決する鍵こそが、中長期的な視点で自社の「ファン」を増やしていく活動、すなわち「採用広報」です。
本記事では、採用広報の基本的な定義から、なぜ今重要視されているのか、具体的な手法、そしてリファラル採用・アルムナイ採用にもつながる成功のステップまで、分かりやすく解説します。
もくじ
採用広報とは?
採用広報とは、企業が採用活動を目的として、自社の経営理念、文化、事業内容、働く環境、社員の人柄といった情報を「社外(求職者・潜在層)」および「社内(既存社員)」「社友(アルムナイ・退職者)」に向けて継続的に発信する活動のことです。
重要なのは、これが単なる「募集情報の広告」ではないという点です。採用広報の本質は、自社のありのままの姿を伝え、コミュニケーションを重ねることで、自社の「ファン」を増やしていく中長期的な関係構築(ブランディング)活動にあります。
採用広報と「採用活動」および「広報(PR)」との意味の違い
採用広報と混同されがちな「採用活動(リクルーティング)」や「広報(PR)」との違いを整理してみましょう。
| 比較項目 | 採用広報 | 採用活動(リクルーティング) | 広報(PR) |
| 主な目的 | ・採用ブランディング ・中長期的な関係構築 ・自社のファンづくり | ・採用(入社) ・欠員補充 | ・企業・サービスブランディング ・社会との関係構築 ・売上向上支援 |
| 主なターゲット | ・求職者(潜在層・顕在層) ・既存社員 ・アルムナイ(退職者) | ・求職者(顕在層) | ・顧客、消費者 ・投資家 ・メディア、社会全体 |
| 活動の時間軸 | 中長期的 | 短期的(募集〜採用まで) | 中長期的 |
簡単に言えば、採用広報は「採用に特化したブランディング活動」であり、今すぐ転職を考えていない潜在層や、自社で働く社員、一度は離れたアルムナイまでをも対象に含みます。
採用広報が重要視される3つの背景
近年、多くの企業が採用広報に力を入れ始めたのには、明確な理由があります。
1. 労働人口の減少と採用競争の激化
ご存知の通り、日本は労働人口の減少が続いており、有効求人倍率は高い水準で推移しています。多くの業界で「買い手市場(企業有利)」から「売り手市場(求職者有利)」へとシフトしました。
「求人を出せば集まる」という時代は終わり、企業は候補者から「選ばれる」存在にならなければ、必要な人材を確保すること自体が困難になっています。
2. 情報の透明化と「口コミ」の影響力増大
SNSや企業の口コミサイトが普及し、誰もが簡単に企業の「リアルな情報」にアクセスできるようになりました。企業側がコントロールできない場所で、良くも悪くも自社の評判が語られています。
こうした時代だからこそ、企業自らが「正直」かつ「魅力的」な情報を積極的に発信し、透明性を高めることが、信頼獲得のために不可欠です。
3. 働き方の多様化と「共感」の重視
現代の求職者は、給与や待遇といった条件面だけでなく、「その会社のミッションに共感できるか」「自分らしく働ける文化か」といった「価値観のマッチ度」を非常に重視します。
自社の「らしさ」や「大切にしている価値観」を発信することは、ミスマッチを防ぎ、自社に本当にフィットする人材を引き寄せるための鍵となります。
採用広報の3つの目的とメリット
採用広報に戦略的に取り組むことで、企業は3つの大きなメリットを得ることができます。
採用ミスマッチの防止と志望度の向上
採用広報を通じて、企業の良い面だけでなく、仕事の厳しさやカルチャーの「ありのまま」を発信することは、候補者の過度な期待を防ぎます。
入社前にリアルな情報を知ってもらうことで、「こんなはずじゃなかった」という入社後のミスマッチを減らし、結果として社員の定着率向上にも寄与します。また、深く企業理解をした上で応募してくるため、候補者の志望度が高い傾向にあります。
採用候補者の母集団形成(潜在層へのアプローチ)
従来の求人広告がアプローチできるのは、主に「今すぐ転職したい」顕在層のみです。
しかし採用広報は、SNSやオウンドメディアを通じて、「いつか転職するかもしれない」潜在層や、「今は転職を考えていない」優秀な人材にも継続的に情報を届けることができます。
「もし転職するなら、あの会社が面白そうだ」と、いざという時に第一想起してもらえる関係性を築くことが、中長期的な母集団形成につながります。
既存社員のエンゲージメント向上
採用広報は、実は「社外」だけでなく「社内」にも大きな効果をもたらします。
自社が社会にどのような価値を提供しているのか、仲間がどのような想いで働いているのかを、社員インタビューや社内報といった形で発信すること(=インナーブランディング)は、既存社員の自社への誇りや愛着(エンゲージメント)を高めます。
社員が「この会社で働けて良かった」と感じることは、離職率の低下はもちろん、後述するリファラル採用(社員紹介)の活性化にも直結します。
採用広報の具体的な手法(ターゲット別)
採用広報には多様な手法がありますが、誰に届けたいかに応じて使い分けることが重要です。
社外向け(求職者・潜在層)の手法
- オウンドメディア運営
採用サイトや採用ブログ(noteなど)で、社員インタビュー、プロジェクトストーリー、企業文化などを発信する。 - SNSの活用
X(旧Twitter)やInstagram、Facebookなどで、オフィスの日常風景や社員の声をカジュアルに発信する。 - 採用ピッチ資料の公開
会社説明資料をWeb上で公開し、誰でも自社の概要を知れるようにする。 - 採用動画の制作
社員の働き方やオフィスの雰囲気が伝わる動画を制作し、YouTubeや採用サイトで公開する。 - プレスリリース
働き方に関する新しい制度や、受賞歴などをメディア向けに発信する。
社内向け(既存社員)の手法
- 社内報・イントラネット
経営陣のメッセージや他部門の活躍、新入社員の紹介などを共有する。 - 社内イベント
キックオフミーティングや表彰式、社内勉強会などを通じて、理念の浸透や一体感を醸成する。 - MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の浸透施策
クレドカードの配布や、MVVを体現した社員の表彰などを行う。
社友向け(アルムナイ・退職者)の手法
- アルムナイ・ネットワークの構築
退職者専用のSNSコミュニティやメーリングリストを構築する。 - アルムナイ向けの情報発信
ニュースレターなどで、会社の最新情報やイベント情報を定期的に届ける。 - 退職者との交流イベント
アルムナイを招いた交流会や勉強会を開催する。
【関連】アルムナイ採用はネットワークが9割!退職者と良好な関係を築く5つのステップと具体的施策
採用広報を成功するための5ステップ
「何から手をつければいいか分からない」という方のために、採用広報をスタートするための基本的な5つのステップをご紹介します。
目的とターゲット(ペルソナ)の明確化
まずは、「誰に」「何を伝えて」「どうなってほしいか」を明確にします。
(例:第二新卒のエンジニアに、当社の技術力の高さと成長環境の魅力を伝え、自社に興味を持ってもらい、応募につなげたい)
ターゲット像(ペルソナ)を具体的に設定することで、発信するメッセージが研ぎ澄まされます。
自社の魅力の棚卸し(3C分析)
次に、自社の魅力を整理します。以下の3つの視点で洗い出してみましょう。
- Company(自社)
自社の理念、文化、制度、技術力など、強みは何か? - Competitor(競合)
採用競合となる他社と比較した時の、自社の独自性は何か? - Candidate(候補者)
ターゲット(ペルソナ)が企業選びで重視するニーズは何か?
この3つの重なる部分が、貴社が発信すべき独自の魅力「EVP(従業員価値提案)」となります。
発信するメッセージとチャネルの選定
Step2で見つけた魅力を、Step1のターゲットに響く「メッセージ」に変換します。
そして、そのターゲットが日常的にどのチャネル(SNS、ブログ、口コミサイトなど)を見ているかを考え、最適な発信場所を選びます。
コンテンツの制作と発信
いよいよコンテンツを制作し、発信します。
最初から完璧なオウンドメディアを作ろうと気負う必要はありません。まずは「社員1人へのインタビュー記事」や「SNSでの日常の様子の投稿」など、始めやすいものからスタートしましょう。採用広報で最も重要なのは「継続すること」です。
効果測定と改善(PDCA)
発信しっぱなしでは意味がありません。
- 記事のPV(閲覧)数
- SNSのエンゲージメント(いいね、リポスト)
- 面接・面談での候補者の反応(「ブログ見ました」という声)
- 応募数や採用決定数への貢献
これらの指標を定点観測し、「どのチャネルの、どのメッセージが響いているか」を分析し、改善を繰り返しましょう。
採用広報がリファラル・アルムナイ採用を加速させる理由
ここまで採用広報の基本を解説してきましたが、採用広報は特に「リファラル採用(社員紹介)」と「アルムナイ採用(退職者の再雇用・紹介)」を成功させる上で重要であると考えています。採用広報がリファラル採用やアルムナイ採用を加速させる理由について紹介します。
社員のエンゲージメントが「紹介したい」気持ちを醸成する
リファラル採用を成功させるには、社員が「この会社を友人にも勧めたい」と心から思える状態(=高いエンゲージメント)が不可欠です。
社内向けの採用広報(インナーブランディング)を通じて、自社のビジョンや社会貢献性を社員自身が再認識することは、エンゲージメントを直接的に高めます。
また、社外向けに発信している魅力的な社員インタビューやブログ記事は、社員が友人・知人を紹介する際の強力な「武器(説明資料)」となり、紹介のハードルを下げてくれます。
アルムナイとの良好な関係が「戻りたい」「紹介したい」土壌を作る
採用広報の対象を「退職者」にも広げることで、企業とアルムナイとの間に「社友」として良好な関係が生まれます。
退職後も会社の最新情報を共有し、交流を続けることで、アルムナイが「顧客」になってくれたり、優秀な「友人を紹介」してくれたり、あるいは「再入社(カムバック採用)」して即戦力として活躍してくれたりする可能性が大きく高まります。
採用広報の「受け皿」としてのツール活用
このように、採用広報は社員やアルムナイとの関係性強化に不可欠です。
しかし、こうした関係性を「個人の頑張り」や「Excel管理」だけで維持・発展させていくのは非常に困難です。
社員が誰を紹介してくれたのか、アルムナイが今どこで何をしているのかを適切に管理し、継続的にコミュニケーションを取るためにリファラル採用やアルムナイ採用に特化したツールを活用し、「仕組み(プラットフォーム)」を整えることが、採用広報の効果を最大化し、リファラル・アルムナイ採用を成功に導く鍵となります。
【関連】リファラル採用ツールおすすめ5選!メリットや選び方を徹底解説
おすすめのアルムナイ採用を支援するサービス「リファアルム」

リファアルムは、リファラル採用とアルムナイ採用を同時に支援するサービスです。採用は感覚的に行うものではなく、全従業員を巻き込み、「全社一丸」となって取り組むことが大切です。「リファアルム」を使うことにより、従業員のリファラル採用やアルムナイ採用に対する「前向きな姿勢」を引き出すことが可能です。
1、従業員が「リファラル」「アルムナイ」に積極的に協力する、魅力的なカルチャーを形成できる。
2、創業以来のノウハウを活かし、「リファラル」「アルムナイ」だけではない採用活動全体の成功を支援。
3、協力してくれた従業員に対し、業界トップクラスのギフトラインナップで謝礼を提供。
リファラル採用・アルムナイ採用でお困りの企業様は、「リファアルム」にお問い合わせください
本記事では、採用広報の定義から重要性、具体的な手法とステップについて解説しました。
採用広報とは、単なる情報発信ではなく、自社の魅力を「社外・社内・社友」に伝え、中長期的に「ファン」を作っていく戦略的な活動です。
採用競争が激化する現代において、ミスマッチを防ぎ、自社にフィットする人材と出会うために、採用広報は欠かせない取り組みとなっています。
特に、社員のエンゲージメントを高め、アルムナイ(退職者)との良好な関係を築くことは、リファラル採用やアルムナイ採用といった、これからの時代の採用活動を成功させるための重要な基盤となります。
しかし、「リファラル採用・アルムナイ採用について、専門家のアドバイスが欲しい」
「リファラル採用・アルムナイ採用を始めたいが、何から手を付けたら良いか分からない」
といったお悩みをお持ちの採用担当者様も多いのではないでしょうか。
そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ弊社の「リファアルム」にご相談ください。
ただツールを入れてもリファラル、アルムナイ採用が増えるとは限りません。
当社では経験豊富な採用コンサルタントが設計から運用までワンストップで支援します。
リファラル、アルムナイ採用成功のために必要なノウハウと実務支援、マネジメントをプロの人事チームが顧客の採用成功まで伴走します。
アルムナイ採用、そして採用活動全体でお困りのことがございましたら、まずはお気軽に下記よりお問い合わせください。