アルムナイ採用を成功させる条件とは?制度設計から待遇の決定まで解説

近年、多くの企業が新たな採用手法として「アルムナイ採用」に注目しています。人材不足や採用コストの高騰といった課題が深刻化するなか、企業の元社員を再び迎え入れるこの手法は、即戦力の確保やミスマッチの防止に繋がる有効な打ち手として期待されています。
しかし、いざ自社で導入を検討しようとすると、「どのような条件で制度を設計すれば良いのだろう?」「元社員とのトラブルを避けるには、どんなルールが必要?」といった疑問や不安をお持ちの経営者・人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
アルムナイ採用は、ただ元社員を呼び戻すだけの単純なものではありません。成功のためには、自社の状況に合わせた丁寧な「条件設定」が不可欠です。
本記事では、アルムナイ採用を成功に導くための具体的な条件設定について、「誰を対象とするか」から「再雇用時の待遇」「円滑な運用ルール」まで分かりやすく解説します。
もくじ
アルムナイ採用とは?
「アルムナイ(alumni)」とは、英語で「卒業生」や「同窓生」を意味する言葉です。ここから転じて、ビジネスの世界では企業の「退職者」を指します。つまりアルムナイ採用とは、自社を一度退職した元社員を、再び社員として雇用する採用手法のことです。
このアルムナイ採用が注目されている背景には、以下のような社会的な変化があります。
- 労働人口の減少
少子高齢化により、新たな人材の確保が年々難しくなっている。 - 転職市場の活発化
終身雇用が当たり前ではなくなり、キャリアアップのための転職が一般化している。 - 採用ミスマッチの防止
高いコストをかけて採用しても、早期離職してしまうケースへの対策が求められている。 - 採用コストの削減
求人広告費や人材紹介手数料など、採用にかかる費用は増加傾向にある。
こうした状況のなか、企業文化を既に理解し、スキルや人柄も分かっている元社員は、企業にとって非常に貴重な人材なのです。
アルムナイ採用のメリット・デメリット
アルムナイ採用には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。
アルムナイ採用のメリット
- 即戦力としての期待
企業文化や事業内容を理解しているため、早期の活躍が見込めます。 - 採用・教育コストの削減
採用広告費や研修コストを大幅に削減できます。 - 定着率の高さ
企業の内部事情を理解した上での再入社のため、ミスマッチが起こりにくく、定着しやすい傾向にあります。 - 新たな知見の獲得
他社で得た経験やスキルを社内に持ち帰ってくれる可能性があります。
【関連】今、注目すべき「アルムナイ採用」5つのメリットと成功の秘訣
アルムナイ採用のデメリット
- 人間関係の摩擦
退職前後の人間関係によっては、既存社員との間に摩擦が生じる可能性があります。 - 既存社員の不満
再雇用時の役職や待遇によっては、既存社員が不公平感を抱くことがあります。 - 新しい風が入りにくい
外部からの新しい視点や発想が入りにくくなる可能性があります。
【関連】アルムナイ採用の導入前に知っておくべきデメリットとは?具体的な対策と成功に導くポイントを解説
これらのデメリットを回避し、メリットを最大化するために、本記事のテーマである事前の丁寧な「条件設定」が何よりも重要になります。
アルムナイ採用の「対象者」に関する条件について
アルムナイ採用の制度を設計する上で、まず最初に決めるべきなのが「誰をアルムナイと定義し、採用の対象とするか」という根幹の部分です。ここでは、対象者を決める際の具体的な条件項目を見ていきましょう。
1.退職理由
最も重要な条件は「円満退職」であることです。後々のトラブルを避けるためにも、対象となる退職理由と、対象外とする理由を明確に定めておく必要があります。
- 対象となる退職理由の例
- キャリアアップ、スキルアップのための転職
- 起業、独立
- 結婚、出産、育児、介護などのライフイベント
- 配偶者の転勤
- 対象外とする退職理由の例
- 懲戒解雇
- 著しい勤務態度の不良による退職勧奨
- 情報漏洩などの問題を起こしたことがある
退職理由を条件に加えることで、企業と元社員の間に信頼関係があることを前提とした制度運用が可能になります。
2.在籍期間
企業文化への理解度や貢献度を測る指標として、在籍期間に条件を設けるのが一般的です。あまりに短い期間で退職した元社員の場合、アルムナイ採用のメリットである「企業文化への深い理解」が期待できない可能性があるためです。
- 設定例
「正社員として1年以上在籍していた者」
企業の風土や事業内容を十分に理解するために必要な期間として、1年~3年程度で設定する企業が多いようです。
3.退職後の経過年数
退職してから時間が経ちすぎると、本人のスキルや知識が陳腐化していたり、会社の事業内容や組織体制が大きく変わっていたりする可能性があります。そのため、退職後の経過年数に上限を設けることも有効な条件設定です。
- 設定例
「退職後5年以内であること」
ただし、これは必須の条件ではありません。例えば、他社で非常に貴重な経験を積んできた人材であれば、経過年数に関わらず受け入れたいケースもあるでしょう。企業の状況に合わせて柔軟に検討することが大切です。
4.役職や雇用形態
退職時の役職や雇用形態(正社員、契約社員、アルバイトなど)を問うか、あるいは限定するかも決めておく必要があります。
- 設定例
「退職時に正社員であった者」
対象範囲を広げれば、多様な人材と再会できる可能性が広がります。一方で、まずはスモールスタートしたいという場合は、正社員に限定して運用を始めるのが良いでしょう。
アルムナイ採用の「再雇用時」に関する条件について
次にアルムナイ採用の対象者を実際に再雇用する際の、処遇やプロセスに関する条件を解説します。ここで最も重要なのは「既存社員との公平性」です。既存社員が不満を抱かないよう、透明性の高いルールを設けましょう。
1.選考プロセス
元社員だからといって、無条件で再雇用するのは避けるべきです。お互いの状況を理解し、ミスマッチを防ぐためにも、適切な選考プロセスを設定しましょう。
- 選考プロセスの選択肢
- 書類選考や一次面接を免除し、部門長や役員との面接からスタートする
- リファレンスチェック(退職前に一緒に働いていた上司や同僚からの評価確認)を実施する
- 形式的な面接ではなく、カジュアルな面談の場を複数回設ける
通常の選考フローよりもプロセスを簡略化することで、アルムナイ候補者の負担を減らし、スピーディーな選考を実現できます。
2.役職・ポジション
再雇用後の役職やポジションをどうするかは、本人の経験やスキル、そして会社の状況をすり合わせて慎重に決定する必要があります。
- 考えられるパターン
- 原則として退職時の役職を参考にする
- 他社での経験やスキルを評価し、現行の評価制度に則って新たに決定する
- 本人と面談し、希望するキャリアプランをヒアリングした上で決定する
重要なのは、決定プロセスを明確にし、本人に丁寧に説明することです。
3.給与・待遇
役職と並んで、最も慎重な検討が必要なのが給与・待遇です。既存社員との公平性を欠いた決定は、組織全体の士気を下げかねません。
- 決定方法の考え方
- 退職時の給与を一つの基準としつつ、現在の給与水準に合わせて調整する
- 他社での経験や市場価値を客観的に評価し、現行の給与テーブルに当てはめて決定する
- 在籍している同年代や同程度のスキルを持つ社員の給与と比較し、バランスを取る
「元社員だから優遇されている」といった誤解を生まないよう、なぜその給与額になったのかを論理的に説明できる根拠を必ず用意しておきましょう。
【関連】アルムナイ採用の待遇はどう決める?適切な決め方と注意点を解説
アルムナイ採用の「運用」に関する条件について
アルムナイ採用は、制度は作って終わりではありません。継続的に機能させ、成果につなげるための運用面のルールも非常に重要です。
1.アルムナイネットワークの構築と登録条件
退職者とのつながりを維持し、いつでもアプローチできる状態にしておくために、「アルムナイネットワーク」を構築しましょう。
- ネットワークの例
- FacebookやLinkedInなどのSNSグループ
- 専用のメーリングリスト
- 登録条件の例
- 円満退職者であること
- 在籍1年以上であること
- ネットワークへの登録に本人が同意していること
退職時に、こうしたネットワークの存在を伝え、登録を促すフローを確立しておくことが大切です。
【関連】アルムナイ採用はネットワークが9割!退職者と良好な関係を築く5つのステップと具体的施策
2.定期的な情報発信とコミュニケーション
ネットワークを構築したら、関係性を維持するために定期的な情報発信を行いましょう。
- 発信する情報の内容
- 会社の近況(新事業や業績など)
- 募集中のポジション
- アルムナイ限定のイベントや交流会の案内
一方的な情報発信だけでなく、元社員が気軽に近況を報告できるような、双方向のコミュニケーションを心がけることが成功の条件です。
3.社内への周知と理解促進
アルムナイ採用を円滑に進めるためには、既存社員の理解と協力が不可欠です。
- 周知すべき内容
- なぜアルムナイ採用を導入するのか(目的・背景)
- 会社にとってどのようなメリットがあるのか
- 再雇用時の処遇は、公平な基準で決定されること
特に、「出戻りはずるい」「一度辞めた人なのに」といったネガティブな感情が生まれないよう、経営層や人事から丁寧に説明し、アルムナイを温かく迎え入れる文化を醸成していくことが重要です。
アルムナイ採用を成功に導くための条件
ここまでアルムナイ採用の制度設計のポイントを解説してきましたが、「企業でここまで詳細な規定を作るのは大変…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。そこで最後に、中小企業の皆様がアルムナイ採用を成功させるための、より実践的な「条件」や「考え方」をご紹介します。
完璧な制度より「スモールスタート」を意識する
最初から完璧で詳細な規定を作り込む必要はありません。まずは「信頼できるあの元社員に、最近どうしているか声をかけてみる」ことから始めてみてはいかがでしょうか。 成功事例が一つ生まれれば、それが社内の前例となり、自然と運用ルールが定まっていくことも少なくありません。まずは小さく始めてみることが成功への近道です。
「いつでも戻っておいで」と言える企業文化づくり
整備された制度以上に、「何かあったら、いつでも戻っておいで」と退職者を温かく送り出せる企業文化こそが、最も重要な成功の「条件」と言えます。 社員が「この会社が好きだった」「またここで働きたい」と思えるような、良好な人間関係や働きがいのある環境を日頃から築いていくことが、未来のアルムナイ採用への最大の投資となるのです。
アルムナイ採用専門ツールの活用
アルムナイネットワークは、すぐに再採用などの成果に結びつくとは限りません。種をまき、水をやり、時間をかけて関係性を育んでいく農耕型のアプローチです。
活動の継続には、アルムナイ採用ツールの活用も効果的となります。
アルムナイ採用ツールを導入することで、アルムナイ人材とのコミュニケーションを円滑化し、アルムナイ採用の成功へと導くことができます。
【関連】アルムナイ採用を成功に導くツールとは?メリット・機能から導入の注意点まで解説
おすすめのアルムナイ採用を支援するサービス「リファアルム」

リファアルムは、リファラル採用とアルムナイ採用を同時に支援するサービスです。採用は感覚的に行うものではなく、全従業員を巻き込み、「全社一丸」となって取り組むことが大切です。「リファアルム」を使うことにより、従業員のリファラル採用やアルムナイ採用に対する「前向きな姿勢」を引き出すことが可能です。
1、従業員が「リファラル」「アルムナイ」に積極的に協力する、魅力的なカルチャーを形成できる。
2、創業以来のノウハウを活かし、「リファラル」「アルムナイ」だけではない採用活動全体の成功を支援。
3、協力してくれた従業員に対し、業界トップクラスのギフトラインナップで謝礼を提供。
アルムナイ採用でお困りの企業様は、「リファアルム」にお問い合わせください
本記事では、アルムナイ採用を成功させるための具体的な「条件設定」について、3つのフェーズに分けて解説してきました。
アルムナイ採用は、単なる採用手法の一つではありません。社員一人ひとりとの関係性を大切にし、長期的な視点で企業の成長を考える、これからの時代に不可欠な人事戦略です。
しかし、「アルムナイ採用について、専門家のアドバイスが欲しい」
「アルムナイ採用を始めたいが、何から手を付けたら良いか分からない」
といったお悩みをお持ちの採用担当者様も多いのではないでしょうか。
そのようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひ弊社の「リファアルム」にご相談ください。
ただツールを入れてもリファラル、アルムナイ採用が増えるとは限りません。
当社では経験豊富な採用コンサルタントが設計から運用までワンストップで支援します。
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