リファラル採用は違法?職業安定法違反にならないための5つの注意点を解説

社員の紹介を通じて新たな人材と出会う「リファラル採用」。採用コストの削減やマッチング精度の向上といったメリットから、多くの企業で導入が進んでいます。
しかしその一方で、「社員への紹介料の支払いが『違法』になるケースがある」と聞き、制度の導入や運用に不安を感じている経営者・人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
結論からお伝えすると、リファラル採用自体は違法ではありません。しかし、紹介してくれた社員への報酬の支払い方を誤ると、「職業安定法」という法律に抵触するリスクがあるのは事実です。
この記事では、リファラル採用に関わる法律を正しく理解し、法的なリスクを回避しながら効果的に制度を運用するための具体的なポイントを、分かりやすく解説します。
もくじ
リファラル採用の意味とメリット
リファラル採用とは、自社の社員に、友人や知人など、企業文化や求める人物像に合いそうな人材を紹介・推薦してもらう採用手法です。ラテン語の「referre(紹介する)」が語源とされています。
リファラル採用は、関係者それぞれに大きなメリットがあります。
- 企業側のメリット
- 採用コストの削減
求人広告費や人材紹介会社への手数料を大幅に削減できます。 - マッチング精度の向上
社員が社風や業務内容を理解した上で紹介するため、カルチャーフィットしやすく、ミスマッチが起こりにくい傾向があります。 - 定着率の向上
入社後のギャップが少なく、社内に知人がいる安心感から、早期離職の防止につながります。
- 採用コストの削減
- 社員側のメリット
- 信頼できる仲間と一緒に働ける。
- 会社の成長に貢献できる。
- インセンティブ(報奨金)を受け取れる場合がある。
- 候補者側のメリット
- 社員からリアルな情報を得られるため、入社後の働き方をイメージしやすい。
- 自分に合った企業かどうかを判断しやすい。
このように多くのメリットがあるからこそ、法律を正しく理解し、適切に運用することが非常に重要になります。
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リファラル採用の違法性を判断する上で重要な「職業安定法」とは?
ここからは、リファラル採用の適法性を判断する上で最も重要な「職業安定法」について、ポイントを絞って解説します。
職業安定法第40条「報酬の供与の禁止」
職業安定法の第40条には、以下のような定めがあります。
(報酬の供与の禁止) 第四十条
労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。
(引用:e-Gov法令検索 職業安定法)
簡潔に言うと、「自社の社員募集を手伝ってくれた人に対して、給与などを除いて、原則として報酬を支払ってはいけません」というルールです。
なぜ社員へのインセンティブが「報酬」と見なされるのか?
この条文に照らし合わせると、社員に支払うリファラル採用のインセンティブが「報酬」と見なされた場合、違法となる可能性があります。
特に、社員による紹介が、本来の業務の範囲を超えて、反復・継続的に行われ、「職業紹介事業(=国の許可が必要な事業)」と判断されるようなケースでは、そのインセンティブは「事業に対する報酬」と見なされ、違法性が高まります。
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厚生労働省の公式見解
これについて、厚生労働省は一つの見解を示しています。それは、「紹介・推薦した社員に対して、就業規則等に基づいて支払われる通常の賃金・給与の範囲であれば、職業安定法第40条で禁止される『報酬』にはあたらない」というものです。
つまり、社員へのインセンティブを「紹介の対価」としてではなく、あくまで「給与や賞与の一部」として、正規のルールに則って支払うのであれば問題ない、と解釈できます。
【ケース別】リファラル採用で違法となる可能性が高いNG例
では、具体的にどのようなケースがリファラル採用で「違法」と判断されるリスクが高いのでしょうか。代表的なNG例を3つご紹介します。
報酬が「紹介の対価」として明確に支払われている
インセンティブを給与や賞与とは全く別のものとして、例えば現金で手渡ししたり、商品券で支給したりするなど、賃金体系から外れた支払い方をすると、「紹介行為への直接的な対価」と見なされやすくなります。
報酬額が社会通念上、著しく高額である
インセンティブの金額が、例えば1人紹介するごとに50万円、100万円といったように、社会通念上あまりに高額な場合、「謝礼」の範囲を超えて「事業」と判断されるリスクが高まります。
紹介活動を「事業」として繰り返し行わせている
社員に対して紹介のノルマを課したり、本来の業務に支障が出るほどの活動を要求したりするなど、社員を実質的なリクルーターのように扱うケースは、組織的な「無許可の職業紹介事業」と見なされる可能性があり、極めて危険です。
リファラル採用を違法性なく運用するための5つのポイント
それでは、どうすれば法的なリスクを回避し、安全にリファラル採用を運用できるのでしょうか。押さえておきたい5つのチェックポイントをご紹介します。
1.就業規則や賃金規程に根拠を明記する
最も重要なのが、インセンティブの支払い根拠を就業規則や賃金規程に明記することです。これにより、インセンティブが「賃金の一部」であることを明確にできます。
<規定例>
第〇条(紹介報奨金)
- 社員が自らの知人・友人等を会社に紹介し、その者が正社員として採用された場合、会社は紹介者である社員に対し、紹介報奨金を支給する。
- 報奨金の額は、1名の採用につき金〇〇円とし、被紹介者の試用期間満了後の給与支払日に、給与と合わせて支給する。
2.報酬は「給与・賞与」として支払う
インセンティブは、「紹介手当」や「リファラル採用報奨金」などの名目で給与明細に記載し、他の手当と同様に給与口座に振り込みましょう。もちろん、所得税の源泉徴収の対象とすることも必須です。
3.報酬額は社会通念上、妥当な金額に設定する
インセンティブの金額に法的な上限はありませんが、一般的には1人あたり数万円~30万円程度が相場とされています。あくまで「社員の協力に対する謝礼」という位置づけで、社会通念上、妥当な範囲の金額に設定しましょう
4.社員に過度な紹介活動を強制しない
リファラル採用は、あくまで社員の自発的な協力によって成り立つものです。「今月〇人紹介してください」といったノルマを課したり、紹介を強要したりすることは絶対にやめましょう。制度の案内は全社的に行い、協力は任意であることを明確に伝えることが大切です。
5.採用の可否は、紹介とは切り離して公正に判断する
「〇〇さんの紹介だから」といって、採用基準を緩めることはあってはなりません。紹介された候補者であっても、通常の選考プロセスと同じ基準で厳格に評価し、公正に採用の可否を判断しましょう。これにより、制度の公平性と信頼性が保たれます。
6.リファラル採用に特化したツールで適切な情報管理を行う
リファラル採用をExcelやスプレッドシート等で管理していると、情報が管理しきれずに混乱したり、制度が形骸化してしまう可能性があります。
近年では、リファラル採用に特化したツールも提供されているため、こうしたツールを活用することで、正しい法律に則って運用することができます。
また、空いた時間で、候補者や社員とのコミュニケーションといった、より本質的な業務に集中できるようになります。
【関連】リファラル採用ツールおすすめ5選!メリットや選び方を徹底解説
おすすめのリファラル採用を支援するサービス「リファアルム」

リファアルムは、リファラル採用とアルムナイ採用を同時に支援するサービスです。採用は感覚的に行うものではなく、全従業員を巻き込み、「全社一丸」となって取り組むことが大切です。リファアルムを使うことにより、従業員のリファラル採用やアルムナイ採用に対する「前向きな姿勢」を引き出すことが可能です。
リファアルムを活用する具体的なメリットは下記の3つです。
1、従業員が「リファラル」「アルムナイ」に積極的に協力する、魅力的なカルチャーを形成できる。
2、創業以来のノウハウを活かし、「リファラル」「アルムナイ」だけではない採用活動全体の成功を支援。
3、協力してくれた従業員に対し、業界トップクラスのギフトラインナップで謝礼を提供。
「リファアルム」を活用してリファラル採用を推進しましょう
今回は、リファラル採用の違法性について解説しました。
正しい知識をもって制度を設計・運用すれば、リファラル採用は企業の成長を力強く後押ししてくれる、非常に有効な採用手法です。
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